診療・治療
【目的】
妊娠初期の黄体機能と妊娠予後の関連について検討するとともに排卵triggerの有無およびその方法、黄体補充の有無およびその方法が黄体機能に及ぼす影響について検討した。
【方法】
2011年1月より2014年4月にかけてAIHにより妊娠し、妊娠判定時(妊娠3週6日~5週0日)に血清ホルモン(エストラジオール:E2、プロゲステロン:P、hCG )を測定した457例を対象として、
① 各血清ホルモン値と流産率の関連および各血清ホルモン値間の相関について検討した。
② 排卵triggerの有無およびその方法と黄体機能との関連について検討した。排卵triggerとしてはGnRHアゴニスト(ブセレリン酢酸塩)あるいはhCG5000単位を使用した。
③ 黄体補充の有無やその方法と黄体機能との関連について検討した。黄体補充は中用量ピル(エチニルエストラジオール+ノルゲストレルあるいは結合型エストロゲン+クロルマジノン酢酸エステルあるいはジドロゲステロンを使用した。
【結果】
① E2<100pg/mlあるいはP<10ng/mlの黄体機能不全群およびhCG<100mIUの群の流産率はそれぞれ63.3%、66.2%、67.6%といずれも高率であった。E2とPの間には正の相関がみられたが、hCGとE2あるいはPとの間には相関はみられなかった。一方で、E2やPが非常に低値の症例であっても適切な黄体補充により妊娠を継続できた症例がみられた。
② 排卵のtriggerとしてGnRHアゴニストを用いた群は、排卵triggerなしや排卵trigger としてhCGを用いた群と比べ黄体機能低不全の割合がやや高いものの有意な差はみられなかった。
③ 黄体補充として中用量ピルを用いた場合E2<100pg/mlあるいはP<10ng/mlとなる割合がそれぞれ55.9%と、47.1%であり、結合型エストロゲン+クロルマジノン酢酸エステル群の16.2%、8.0%、ジドロゲステロン群の15.4%、7.7%に比し有意に高率であった。
【考察】
今回の検討から、妊娠判定時のE2は100pg/ml以上であることが望ましく、Pは10ng/ml以上が望ましいと考えられた。排卵triggerとしてのGnRHアゴニストは黄体機能不全を有意に増加させるものではなかった。黄体補充として中用量ピルを用いた場合には黄体機能不全を起こす割合が高く、卵巣機能をより強く抑制することが示唆された。妊娠判定時に高度の黄体機能不全を示す症例でも早期に黄体補充を行えば症例によっては妊娠継続が可能と考えられた。