診療・治療
【発表の概要】
【目的】
精液検査にあたっての禁欲期間は、WHOでは2日~7日間を推奨しており禁欲期間が長くなると、精子運動率の低下や奇形率の増加、また細菌により白血球が増加すると考えられている。人工授精ではMarshburnらが、禁欲期間を2日以下とすると総精子数は減少するが、妊娠率は高くなったと報告している。そこで今回我々は、禁欲期間が胚培養成績に及ぼす影響を検討した。
【方法】
2011年9月~2012年4月にIVFを施行した210周期を対象とした。禁欲期間を6つの群1日(A群)、2日(B群)、3日(C群)、4日(D群)、5日(E群)、6日以上(F群)にわけ、受精率、良好分割率、胚盤胞発生率及び継続培養胚あたりの良好胚盤胞率の検討を行った。
【結果】
禁欲期間別の受精率、良好分割率、胚盤胞発生率及び良好胚盤胞率はA群93.2%(55/59)、58.8%(30/51)、72.5%(29/40)、27.5(11/40)。B群73.2%(281/384)、63.9%(161/252)、54.2%(104/192)、52.9%(55/104)。C群72.6%(342/471)、56.6%(167/295)、50.6%(121/239)、44.6%(54/121)。D群78.9%(195/247)、62.2%(107/172)、50.4%(69/137)、44.9%(31/69)。E群73.6%(148/201)、39.7%(52/131)、41.3%(19/46)、17.8%(19/107)。F群77.8%(562/722)、55.0%(264/480)、49.2%(193/392)、45.1%(87/193)であった。
受精率はA群が他群と比較して有意に高かった。良好分割率は、E群が他群と比較し有意に低かった。胚盤胞発生率は、A群が他群と比較し有意に高く、良好胚盤胞率は、B群がE群と比較し有意に高かった。
【結語】
受精率、良好分割率、胚盤胞発生率、良好胚盤胞発生率は禁欲期間が短い方が高かった。この結果は、ARTにおいて禁欲期間を短く設定することで治療成績を向上できる可能性を示唆するものと考えられる。
【文献】
Marshburn et al. Fertil Steril. 2010;93:286-88