診療・治療
【発表の概要】
【目的】
近年注目されている無加湿型培養器(以下EZ culture)(ASTEC社製)は、菌類の繁殖を抑制でき、メンテナンスが容易であるだけでは無く、1台の培養器内に独立した6個のチャンバーがあり、各チャンバーによる個別培養が可能である点が長所として挙げられる。一方で、各チャンバーにおけるCO2 とN2ガス(以下ガス)の供給方式は、1つのタンクにガスが流入し、その濃度が調整された後に各チャンバーに供給され、再び1つのタンクに戻るという循環方式であることから、1個のチャンバーを開閉すると他のチャンバーの気相にも変化を与える可能性があり、培養は個別であってもガス環境は個別ではないのが現状である。そこで、今回我々は、EZ cultureのガス供給方式を循環方式ではなく、各チャンバーに直接供給し循環せずに外に排出する非循環方式を用いることで、ガス環境を個別化し胚発生の改善につながるか検討をした。
【材料及び方法】
破棄予定となった採卵後2日目の凍結初期胚64個を患者の同意を得て研究に用いた。これらを循環方式(以下循環群)と非循環方式(以下非循環群)の2群に分け培養を行い、胚盤胞発生率及び良好胚盤胞率を比較検討した。循環群においては庫内の気相の変化が与える影響を検討するため、1日3回、1回につき5秒程度チャンバー1箇所を開閉した。
【結果】
循環群と非循環群で胚盤胞発生率は、81.3%(26/32) と81.3%(26/32)、良好胚盤胞率は、46.2%(12/26)と38.5%(10/26)となり各項目において有意差は認めなかった。(表1)
【考察】
循環群と非循環群において培養成績に有意差は認めず、EZ cultureのガス供給方式を非循環方式にしても胚発生の改善を得られない事が示唆された。また、循環方式におけるチャンバーの開閉が胚発生に与える影響を懸念していたが、タンク内の気相の回復が早く、胚発生に影響を与えない程度であったことが示唆された。非循環方式では各チャンバーに流入したガスは常に排出される為、循環方式と比較しガス消費量が増加するというデメリットがあり、今回の検討により非循環方式で培養成績の改善が認められなかったことから、非循環方式にするメリットは少ないと考えられた。
表1 循環群と非循環群における培養成績
|
循環群 |
非循環群 |
P |
胚盤胞発生率 |
81.3% (26/32) |
81.3% (26/32) |
N.S |
良好胚盤胞率 |
46.2% (12/26) |
38.5% (10/26) |
N.S |