診療・治療
【発表の概要】
【目的】複数胚移植によって妊娠率は上昇したが多胎の頻度も多く、周産期医療に多大な影響を及ぼした。そこで当院は2006年より複数胚移植の適応を厳格におこない単胚移植を積極的に実施してきた。その結果多胎率は2005年の20%前後から2009年以降2〜3%と低下している。一方、単胚移植後の双胎(MZT)は従来から報告されており発生頻度は生殖医療では0.9〜2.0%に見られ自然界の0.4%にくらべ2~5倍ほど高いと言われている。また、頻度はきわめて低いが品胎も報告されている。今回我々は、単胚移植後の品胎を3例経験したので報告する。
【方法】2006年1月~2011年6月までに単一胚移植を実施した10988周期を対象とした。
【症例1】30歳前半。初産婦。卵管因子の適応にてART(IVF)となる。ホルモン補充周期(HRC)にてグレード(以下G)5AA(Gardner分類)胚盤胞を黄体期5日目相当日に移植した。assisted hatching (AH)無。妊娠8週に2絨毛膜3羊膜の膜性診断した。FHBは2つで最終的にはMDとして高次病院に紹介した。TTTS、PIHのため妊娠30週6日で1156g、1042gで分娩となった。胎児奇形は認めなかった。
【症例2】30歳後半。初産婦。卵管因子にてART(IVF)となる。自然周期にてG4AB胚盤胞を黄体期5日目相当日に移植した。AH試行。妊娠8週に2絨毛膜3羊膜の膜性診断した。心拍は2つから1つになり近医に紹介した。妊娠経過は順調で妊娠39週、3526gで分娩となった。出生後も経過順調で胎児奇形など認められなかった。
【症例3】30歳後半。経産婦。男性因子の適応にてART(ICSI)となる。ホルモン補充周期(HRC)にてG4BA胚盤胞を黄体期5日目相当日に移植した。AH試行。妊娠8週に1絨毛膜1羊膜の膜性診断した。心拍は2つで最終的にはMMとして高次病院に紹介した。本人の申告では38週で2000g、2000gで児は良好のことであったが周産期転帰が不明なため、郵送にて紹介病院に問い合わせ中である。
【考察】今回、単胚移植全妊娠例の0.09%(3/3353)に品胎を認めた。頻度は低いが、単胚移植でも品胎のリスクを念頭に置いておく必要がある。