診療・治療
【発表の概要】
【目的】
精漿中のカルニチン濃度は、精子濃度および精子運動率と正の相関をもつことが諸外国から報告されている(Sheikh et al.2007)。しかし日本人男性における精漿カルニチン濃度と精液所見との関連を示し検討した報告は少ない。そこで、今回我々は、精漿総カルニチン濃度の測定を行い、精子濃度および運動率との相関性を検討したので報告する。
【方法】
2013年5月~7月までに男性不妊外来を受診した患者のうち検査に同意を得た69例を対象とした。これら69例をWHOラボマニュアル第4版を基準に、A群(n=25);正常精液、B群(n=17);乏精子症(精子濃度が20×106/ml未満)、C群(n=3);精子無力症(前進運動精子が50%未満)、D群(n=16);乏精子且つ精子無力症(B群且つC群)、E群(n=9);無精子症(精液中に精子を認めない)の5群に分けて検討した。精漿は、-20℃にて凍結保存し検査に供した。精漿総カルニチン濃度は、アシルカルニチンエステラーゼによってアシルカルニチンを遊離体に誘導した後、酸化還元酵素系反応を用いた吸光度によって測定した。
【結果】
総カルニチン濃度(平均値±SD)は、A群574.8±276.4μM、B群326.1±176.4μM、 C群498.4±279.7μM、D群398.7±224.6μM、E群286.0±149.6μMとなり、A群と比較し、B群、D群、およびE群で、有意に少なくなった。
また、総カルニチン濃度は、精子濃度および運動精子濃度との間に正の相関(R=0.443とR=0.424)を認めた。一方、運動率は総カルニチン濃度との間に相関関係は認めなかった。
【考察】
精液所見正常精液と比較し乏精子症、乏精子・精子無力症および無精子症患者の精液では、精漿カルニチン濃度が低下することが示唆された。また、精漿カルニチン濃度と精子濃度および運動精子濃度との間には正の相関が存在することが示唆された。今後は、カルニチンをサプリメントとして摂取することで精液所見の改善が見られるかどうか検討していく予定である。