診療・治療
[目的]
単一胚移植に伴い、5-6日間の胚培養を行い胚盤胞に到達した胚を移植する施設が多くなってきた。しかしながら、胚盤胞までの長期培養はin-vivoに比べ発生が遅延し、また一卵性双胎のリスクの上昇が懸念されるなど、負の側面も指摘されている。よって本研究ではタイムラプス観察によりDay2の段階で胚盤胞発生能を予測することができるかを検討した。また、細胞分裂時に起こるフラグメンテーションと異常分割球の鑑別を客観的に行えるようフラグメントと異常分割球を細胞の大きさから線引きすることを試みた。
[方法&結果]
2014年1月から12月までの期間に当院においてPrimoVision(Vitrolife)によるタイムラプス観察を行った90周期のうち2PNを確認できた351コの接遇子を対象とした。1cell-2cells-4cellsと倍々に発生した胚の第一分割時の最大フラグメント長径と良好胚盤胞(>3AA)獲得率の相関を調べた結果、0-25μmの群と26-40μm群の両群間に良好胚盤胞獲得率における統計的有意差が見られた(p=0.0285)。次に胚の第一分割時の最大フラグメント長径25μm以下をフラグメントのcut-off値と定義し、この基準を満たした正常倍々分割群の胚盤胞発生率と良好胚盤胞率はそれぞれ94.7%(107/113)と41.6%(47/113)であり、細胞分割の後戻りが起こった群(50.8% (33/65), p<0.001, 4.6% (3/65), p<0.001)、direct 3-4cells分割群(56.7% (56/99), p<0.001, 6.1% (6/99), p<0.001)、direct >5cells分割群(13.5%(10/74), p<0.001, 0% (0/74), p<0.001)より有意に高く、正常倍々分割以外の群では良好胚盤胞率が極めて低いことが分かった。
[考察]
タイムラプス観察下に2日間培養し、分割の様式に加えて分割時の最大フラグメント長径を観察することで胚盤胞発生率と良好胚盤胞率を予測できる可能性がある。この指標を用いる事で、良好胚を選別する目的での培養期間延長を回避出来る可能性がある。今後は更に健常児獲得率からフラグメントの大きさのcut-off値を修正する予定である。