診療・治療
Capalboら(2017)は通常サイズの雌雄2前核に加え小さい1前核を観察する胚(2.1PN胚)の中に2倍体が存在し生児が得られたことを報告した。以降、2.1PN胚に関して複数の施設より報告がされてきたが2.1PN胚を移植対象胚として取り扱うべきか否か、結論には至っていない。今回、当院における2.1PN胚の発生率、胚盤胞到達率、良好胚盤胞到達率を検討した。
2020年8月から2021年5月に当院で採卵を行った3110周期17691個を対象とした。Capalboらの論文より、小さい1前核が通常サイズの雌雄2前核の三分の一以下である胚を2.1PN胚としIVF、ICSIそれぞれで発生率、胚盤胞到達率、良好胚盤胞到達率を算出した。胚盤胞到達率、良好胚盤胞到達率は2PN、3PNとの比較を行った。
2.1PN胚の発生率はIVFで0.31%(22/7204)、ICSIで0.56%(59/10487)であり、IVFと比較しICSIで有意に高い値となった。小さい1前核の平均面積は98.4µ㎡であった。胚盤胞到達率は2PN、2.1PN、3PNそれぞれIVFで65.4%(1980/3029)、45.5%(10/22)、17.7%(52/294)、ICSIで57.1%(3332/5831)、44.1%(26/59)、26.0%(44/169)であった。IVF、ICSIともに、2.1PNで2PNと比較し有意差はないものの低い傾向が見られた。また2PN、2.1PNと比較し3PNで有意に低い結果となった。良好胚盤胞到達率は2PN、2.1PN、3PNそれぞれIVFで33.9%(671/1980)、20.0%(2/10)、13.5%(7/52)、ICSIで26.4%(881/3332)、26.9%(7/26) 、29.5%(13/44)であった。IVF、ICSIともに2.1PNと比較して2PN、3PNで有意差は認めなかった。
2.1PN胚は3PN胚と比較し胚発生が良好であることから、3PN胚とは区別し考えるべきであることが示唆された。しかし、2PN胚と比較した場合の胚発生が有意差はないものの不良であったことから何らかの異常がある可能性も否定できない。移植して生児を得たという報告は複数あるため、移植は患者同意のもと慎重に判断する必要がある。