【目的】
ARTにおいてMD双胎が起こるリスク因子は未だ確定されていない。よって今回我々は胚盤胞内細胞塊(ICM)に注目した解析を行うことにより、MD双胎のリスク因子を模索することを目的とした。
【対象と方法】
2011年1月から2014年12月までの期間にHRT周期凍結融解単一胚盤胞移植を行った8435周期において融解数時間後の胚盤胞ICMグレードとMD双胎発生率の関連を調べた。さらに、2013年6月から2014年12月までの期間にEmbryo Scopeを用いたタイムラプス観察を行い、かつHRT周期凍結融解単一胚盤胞移植を行った71個の胚盤胞ICMの経時的変化を後方視的に調べた
【結果】
MD双胎率はICMのグレードがAの場合、0.38% (3/796)であり、ICMグレードがBまたはCの場合の1.38% (34/2463)に比べて有意に低い結果となった(p=0.032)。このうちタイムラプス観察を行なった71個の胚盤胞のうち、2胚がDD双胎となり、1胚がMD双胎であった。MD双胎となった胚盤胞ICMの継時的変化を詳細に観察したところ、一旦塊となったICMの細胞間結合がゆるみ、少なくとも8個の細胞が割球に戻る現象が観察された。また、この現象は他の胚盤胞のICMでは見られなかった。
【考察】
本研究結果より、タイムラプス観察にてICM細胞間結合のゆるみがMD双胎発生頻度を上げる一因である可能性が示唆された。培養液中に存在する細胞間結合のゆるみの原因となる物質としてEDTAが挙げられることから、今後はEDTAの検討を行う予定である。