診療・治療
ARTにおける精子調整方法には、遠心分離を利用した調整法などが用いられているが、精子に対する物理的ダメージやDNA fragmentation index(以下:DFI)の増加が懸念されている。
そこで本検討では、Migration Gravity Sedimentation法を利用した遠心分離を行わない運動良好精子を選別する装置「ミグリス」(以下:ミグリス群、株式会社メニコン)に着目し、密度勾配遠心分離法 (以下:従来群)との調整後の精子濃度、精子運動率及びDFIを比較検討したので報告する。
液量1.6ml以上、運動精子濃度1000万/ml以上の精液40検体を対象とした。まず検体を1.6ml採取し、Universal IVF Medium(以下UIM)を用いて希釈し、液量を3.2mlに統一した。そのうち0.2mlを原精液とし、残り3.0mlを従来群とミグリス群の半量ずつに分けて調整を行った。従来群では、Percollを用いて2層(90%、45%)密度勾配遠心分離法を施行し、上清除去後UIMを用いて調整液を回収した。更に20検体を従来群とミグリス群に分け、HalospermG2を使用しDFIの評価を行った。
調整後の平均運動精子濃度は、従来群1160万/ml、ミグリス群540万/ mlとなりミグリス群は有意に低かったが、平均精子運動率は従来群81.4%、ミグリス群90.1%とミグリス群が有意に高かった。DFIは、原精液19.9%に対し、従来群7.2%、ミグリス群1.3%と両群とも原精液より有意に低くなった。またミグリス群は従来群と比較し、DFIが有意に低かった。
平均運動精子濃度は、従来群の方が高いが平均精子運動率はミグリス群の方が高かった。またDFIは両群とも原精液より有意に低かった。一方でミグリス群は、従来群と比較し有意に低くなった。以上のことから、ミグリス群は従来群より運動精子を選別し、精子へのダメージが少ない調整法であることが示された。