診療・治療
HiGROW OVIT PLUSは日本卵子学会と扶桑薬品工業の共同開発で作られた1-step mediumである。特徴として卵管液組成に基づき、既存のmediumに比べ必須アミノ酸は低く、非必須アミノ酸は高く、タウリンを高濃度配合している。今回、我々はOrigio社のSAGE 1-Step mediumと、HiGROW OVIT PLUSの培養成績を比較検討した。
2018年8月~9月までにARTを行い、2PNが4個以上得られた74周期 (2PN=524個)を対象とした。同一周期で得られた胚を、SAGE群とOVIT群の2種類の培養液でsplit培養し、両群のD2分割率、D2良好分割率 (4cellG2≤)、D5胚盤胞発生率、D5良好胚盤胞率 (G3AA≤)について比較検討を行った。
検討対象の平均年齢は32.8±4.7歳、当院平均ART回数は1.9±2.2回であった。SAGE群とOVIT群の培養成績は、D2分割率 (98.8% vs 98.5%)、D2良好分割率 (53.3% vs 53.1%)、およびD5胚盤胞発生率 (57.5% vs63.4 %)、D5良好胚盤胞率 (23.0% vs 23.7%)となり、両群間に有意差を認めなかった。しかしながら、IVF群とICSI群に分けて比較すると、IVF群では全ての項目に有意差を認めなかったが、ICSI群でD2分割率 (99.1% vs96.6%)、D2良好分割率 (45.0% vs 43.9%)、D5良好胚盤胞率 (20.2% vs 22.0%)では両群間に差を認めなかったものの、D5胚盤胞発生率 (47.5% vs61.5 %)はOVIT群で有意に高かった(P<0.05)。
本検討結果よりICSI群におけるOVIT群でD5胚盤胞発生率は有意に高かった。グリシン、タウリンは胚発生を改善するという報告があり、培養液の組成を卵管液の組成へ近づけることは、胚盤胞発生率の改善に有効であることが示唆された。