診療・治療
当院では、2018年10月よりThe Fetal Medicine Foundationのソフトウェアを用いた初期胎児精密超音波検査(dUS)、USと母体血清マーカーを組み合わせたFirst Trimester Screening(FTS)が提供可能となった。なお、FTSについてはdUS後に希望がある場合にのみ提供している。また、2019年1月より検査前の遺伝カウンセリング(GC)を必須としている。今回は、当院におけるFTSの需要と検査後の意思決定について現状を報告する。
2020年6月までに当院にてdUSを実施した550例。【方法】dUS後にFTSを希望した割合とその背景、FTS後の意思決定についてまとめた。
対象者の内、FTSを希望したのは170例。この内、dUSにて21、18、13トリソミーのリスク上昇がみられたのは28例であった。FTSでは21トリソミー陽性が13例であり、その他は陰性であった。両検査でリスク上昇なしとなった133例では追加検査の希望はなく、両検査でリスク上昇ありの4例については1例がNIPT、3例が絨毛検査(CVS)を希望した。両検査の結果に相違のあった33例では3例がNIPT、3例がCVS、3例が羊水検査を希望し、24例は追加検査を希望しなかった。
FTS受検者の多くはdUSにてリスク上昇はなく、FTSは更なる安心感を求めての受検であるように考えられた。しかし、実際には両検査の結果には相違がみられる場合があり、検査を併用する場合はあらゆる可能性を考慮した事前説明が重要であると考えられた。【結語】dUSやFTSはNIPTに比べると陽性的中率が低いことが知られており、検査後の方針決定に苦慮することがある。このことから、NIPTだけではなくあらゆる出生前診断において事前のGCは重要であると考えられた。