診療・治療
Laser assisted hatching (LAH)による胚への影響を考えると、どの程度の開孔範囲が有効であるか未だ議論の余地がある。我々も過去にLAHの開孔範囲の検討を行ったが、明確な結論は得られていない。そこで本研究では、単一凍結融解胚盤胞移植におけるLAHの開孔範囲が妊娠成績に与える影響について再度前方視的に検討した。
2019年5月~12月に凍結融解胚盤胞移植を実施した1241周期を対象とした。検討方法は、2019年5月~8月にレーザーにより透明帯の全周の1/4を開孔してから移植した群(対照群n=680)、2019年9月~12月に凍結融解胚盤胞移植を行った561周期のうち、レーザーにより1/2を開孔してから移植した群(1/2開孔群n=317)、1/2を開孔した後にピペッティングにより透明帯から完全に脱出させて移植した群(脱出群n=244)の3群に分類し、妊娠成績を比較検討した(検討1)。
凍結融解胚盤胞移植1241周期のうち、移植した胚盤胞のグレードが、Gardner分類3AA以上と3AA未満の2群に分けてその妊娠成績を検討した(検討2)。
検討1:臨床妊娠率はそれぞれ対照群が40.1%(273/680)、1/2開孔群が38.8%(123/317)、脱出群が36.9%(90/244)となり、対照群において高い臨床妊娠率が得られた。しかし、各群間において有意差はなかった。
検討2:グレード別の臨床妊娠率は、3AA以上、3AA未満それぞれ対照群54.7%(152/278)、30.1%(121/402)、1/2開孔群53.5%(69/129)、28.7%(54/188)、脱出群47.7%(51/107)、28.5%(39/137)となり、対照群において臨床妊娠率が高い傾向を認めたが、各群間に有意差はなかった。
本研究結果から、LAHの開孔範囲の違いは、妊娠成績に大きな影響を与えないという結果が得られた。また、レーザー照射範囲を広げることによる熱影響を考慮すると、開孔範囲が3群の中で最も狭い1/4開孔で十分にhatchingし着床している可能性が示唆された。