診療・治療
HiGROW OVIT PLUSは日本卵子学会と扶桑薬品工業の共同開発で作られた1-step mediumである。特徴として卵管液組成に基づき、既存のmediumに比べ必須アミノ酸は低く、非必須アミノ酸は高く、タウリンを高濃度配合している。今回、我々はA社の1-Step mediumと、HiGROW OVIT PLUSの培養成績を比較検討した。
2018年8月~12月までにARTを行い、2PNが4個以上得られた、161周期 (2PN=1157個)を対象とした。同一周期で得られた胚を、A社1-Step (A社群; 2PN=570個)と、HiGROW OVIT PLUS (OVIT群; 2PN=587個)の2種類の培養液でsplit培養し、両群のDay2時の分割率、良好分割率 (4cellG2≦)、D5胚盤胞発生率、D5良好胚盤胞率 (G3BB≦)について比較検討を行った。
検討対象の平均年齢は34.8±4.6歳、当院平均ART回数は1.8±1.7回であった。A社群とOVIT群の培養成績は、D2分割率 (98.8% vs 98.0%)、D2良好分割率 (51.3% vs 54.3%)、およびD5胚盤胞発生率 (57.7% vs 57.7 %)、D5良好胚盤胞率 (38.3% vs 38.5%)となり、両群間に有意差を認めなかった。しかしながら、IVF群とICSI群に分けて比較すると、IVF群のD5良好胚盤胞率(49.5% vs 58.3%)(P=0.08)と、有意差は認めないものの、OVIT群で高い傾向がみられた。
本検討結果から、IVF群におけるOVIT群でD5良好胚盤胞率は高い傾向を認めた。グリシン、タウリンは胚発生を改善するという報告があり、培養液の組成を卵管液の組成へ近づけることは、胚盤胞発生率の改善に有効である可能性が示唆された。今後は凍結融解胚における妊娠率、流産率についても比較検討していきたい。