英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

研究開発・学会発表

診療・治療

第34回 日本受精着床学会総会・学術講演会

  • 卵子形質異常とタイムラプス観察による新知見
  • 2016年9月15日(木)~16日(金) 軽井沢プリンスホテルウエスト
  • 第34回 日本受精着床学会総会・学術講演会
  • 大月純子
ヒト卵細胞質には主に4つの異常形態(空胞:fluid-filled vacuole、滑面小胞体凝集塊 :smooth endoplasmic reticulum cluster (sERC)、屈折体:refractile body / lipofuscin body、centrally located cytoplasmic granularity (CLCG))がある。空胞形成は卵子減数分裂時、初期胚、桑実胚、胚盤胞発生段階のあらゆる時点で起こり、数や大きさも様々である。
sERCは前述の空胞と異なり、辺縁が不明瞭かつ半透明であり、主にMII期の卵子に出現する。透過型電子顕微鏡観察にて、この空胞様形成は滑面小胞体の凝集塊であることが判明した。大きさはホフマンモジュレーション倒立顕微鏡下では観察困難な小さい凝集塊からGVの2倍以上の面積を有するものも存在する。2004年に発表したsERC発生周期にて妊娠率が低下するという論文(Otsuki et al., Hum Reprod) が引き金となり、多くの追試データが発表され、当初はsERC(+)卵子由来胚の移植により生まれた児に様々な異常が相次いで報告されたが、近年では逆にsERC(+)卵子由来胚移植による健児出産も報告されている。sERCは卵胞あたりのE2が高値となった場合に出現しやすいことからも、sERC(+)卵子の細胞質は十分もしくは過分に成熟していると考えられる。よって今後はsERC(+)卵子が円熟、過熟、腐敗の一歩手前のどの段階にあるのかの識別が必要になってくるのではないだろうか。
CLCGは、卵細胞質の中央部に出現する細胞質が粗くグラニュールな状態であり、sERCと同様に同一患者において繰り返し出現する傾向にある。CLCGは卵細胞質の未熟性が原因であると考えられており、着床率と継続妊娠率が共に低いことが報告されている。また、CLCG由来の胚には高率に染色体異数性が見られること、CLCGが繰り返し出現する患者の妊娠率が低いことが報告されている。興味深いことに、CLCGには大小様々なrefractile/ lipofusin bodies が散在しており、refractile / lipofuscin body とCLCG の出現原因に共通点(卵巣周囲血流や卵胞液組成など)がある可能性がある。
本シンポジウムでは、卵子の形質異常において当院でのタイムラプス解析から得た知見と近年の論文報告からの考察を述べる予定である。
さらに、雌雄2前核核膜消失直前の面積差から出産に至る可能性のある接合子を評価する方法、およびARTに起因するリスクとして長年問題となっている一絨毛膜二羊膜性双胎のリスク因子としてタイムラプス観察より得た知見についても言及したい。
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