診療・治療
cIVF-1PN由来胚は、2倍体の正常胚である場合があり健常児が生まれる一方、ICSI-1PN由来胚は、ほとんどの胚に染色体異常があり妊娠に至らないことが報告されている。よって本研究ではcIVF-1PN由来胚 および ICSI-1PN由来胚の臨床成績を解析すると同時に、ICSI-1PN由来胚において染色体異常率が高くなる原因模索のため、1PNの大きさに着目し検討することを目的とした。
2011年1月~2014年12月に凍結融解単一胚盤胞移植を行った7589周期の後方視的解析を行った。cIVF-2PN由来胚盤胞を移植した5332周期、ICSI-2PN由来胚盤胞を移植した2165周期を対照とし、cIVF-1PN由来の胚盤胞移植72周期、ICSI-1PN由来の胚盤胞移植20周期の臨床妊娠率、流産率、生児獲得率、先天異常率の比較検討を行った。さらに、2013年1月~2015年2月の期間にタイムラプス観察を行った胚のうち、1PNであった79個において、核膜消失直前の1PN面積をcIVF由来(39個)、ICSI由来(40個)別に算出し比較検討を行った。
7589移植周期中3084周期が臨床妊娠(40.6%)に至り、それぞれの臨床妊娠率はcIVF-1PN: 36.1%、cIVF-2PN: 42.1%、ICSI-1PN: 0%、ICSI-2PN: 37.6%であった。cIVFにおける流産率はcIVF-1PN: 16.0%、cIVF-2PN: 23.8%、生児獲得率はcIVF-1PN: 29.6%、cIVF-2PN: 31.7%、先天異常率はcIVF-1PN: 5.9%、cIVF-2PN: 2.7%であり、いずれもcIVF-1PNとcIVF-2PN間に有意差を認めなかった。一方、ICSI-1PN由来胚からの妊娠は得られず、臨床妊娠率はICSI-2PNと比べ有意に低い結果となった(P=0.001)。1PNの平均面積はそれぞれICSI-1PN: 666.4µm2 (±105.2)、cIVF-1PN: 720.8µm2 (±114.4)であり、ICSI-1PNの平均面積はcIVF-1PNに比べ有意に小さかった(P=0.028)。
cIVF-1PN接合子は胚盤胞まで発生すれば2PNと同等の生児獲得率が得られたが、ICSI-1PN接合子は胚盤胞へ発生しても移植後の妊娠例は得られなかった。ICSI-1PNのサイズがcIVF-1PNのサイズと比べ有意に小さいことから、ICSI-1PN由来胚が妊娠に至らない原因はICSI時の紡錘体穿刺(吸引)による紡錘体–染色体複合体損傷と関連する可能性が考えられる。