診療・治療
雄性前核は雌性前核より大きいと一般的に言われているが、雌雄2前核の確認は通常受精から16-18時間後に
行われる。これはsyngamyの約4時間前に相当するため、この時間差による雌雄2前核の差異が生じている可能性
がある。よって、タイムラプス観察により雌雄2前核核膜消失(PNMBD)直前の大きさと出産に至った接合子との関連を調べ、受精後1日目に出産まで至る可能性のある接合子を評価することを目的とした。
2013年6月から2014年12月までの期間にEmbryo Scopeを用いたタイムラプス観察を行い、かつ凍結融解単一
胚盤胞移植を行った71個の胚盤胞の後方視的解析を行った。PNMBD直前およびPNMBD4時間前の雌雄2前核 それぞれの長径と短径から面積を算出し、それぞれのタイミングにおける面積差と出産に至った胚との関連を調べた。
71症例中41症例に心拍が確認され36症例が出産、4症例が流産、1症例は不明である。出産に至った接合子のPNMBD直前の雌雄2前核面積差(11.6 μm2 (±15.5))は、出産に至らなかった接合子の面積差(62.8 μm2 (±53.3))より有意に小さく(p<0.001)、PNMBD 4時間前においても有意な差が得られた(39.9 μm2 (±37.8) vs 62.8 μm2 (±43.0)(p=0.012))。また、出産に至った接合子におけるPNMBD直前の雌雄2前核面積差はPNMBD 4時間前より有意に小さく(p<0.001)、出産に至らなかった接合子おいての有意差は見られなかった。
本研究において出産に至った胚におけるPNMBD直前の雌雄2前核の面積はほぼ同等であることが判明し、この時点で大小差がある場合は染色体異数性異常などが存在することが推測された。また、PNMBD直前の雌雄2前核面積が同等であることが、出産に至る胚の選別法の一つとして有用であると考えられた。