はなぶさコラムス
当院理事長 塩谷雅英が毎日の診療の中、見えてきたこと、皆様に是非お伝えしたいことなどをつづったコラムです。
赤ちゃんは、お母さんとお父さんの遺伝子を半分ずつ受け継いで生まれてきます。お母さんにとって、赤ちゃんはかわいい我が子には違いないのですが、半分はお父さんの遺伝子をもっているため、免疫学的には半異物ということになります。実際、お母さんと胎児では、血液型が異なっていることもあります。通常、体内に移植された異物は拒絶反応によって排除されます。異なった血液型の血液の輸血では拒絶反応がおこるのと同じことです。従って、半異物である胎児が、お母さんの子宮のなかで育ち、拒絶されずに発育するのは不思議な現象と言えるでしょう。近年、免疫学の進歩に伴って、半異物である胎児が拒絶されずに発育するメカニズムは徐々に解明されつつあります。そして近い将来このメカニズムが完全に解明されれば、不妊治療も大きく前進することでしょう。流産の予防にもつながることになります。さらに、臓器移植における拒絶反応の予防にも道が開けることになります。
院長 塩谷雅英