はなぶさコラムス
当院胚培養スタッフからお届けするコラムです。一般の治療ではなかなか見えにくい部分をお届けしています。
1)禁欲期間とは?
一度射精を行ったあと、次の射精が行われるまでの期間を言います。
当院での禁欲期間の数え方は、射精していない日数です。
つまり、火曜日に射精をし、土曜日に次の射精を行った場合、禁欲期間は3日間となります。(図1参照)
図1)禁欲期間の例
2)禁欲期間が長い方が良いのか?
患者様によく質問されるのが、
「禁欲期間が長い方が、精子が貯まって良いのではないでしょうか?」です。
結論から言うと、「良くない」です。
当院では精子の数と受精卵の状態から検討しました。
① 精子の数について
下記のグラフで分かるように、禁欲期間が長い方が、精子濃度(精液1mlあたりの精子の数)が多いというデータがあります。図2参照。
では、実際に動いている精子(運動精子)はどうでしょう?
グラフを見てわかる通り、禁欲期間が長くなる程、運動率(精子の数あたりの運動精子の割合)が下がっているのはわかります。これにより、禁欲期間を長くしても動いていない精子(非運動精子)が増えるだけで、運動精子は増えていない事がわかります。
図2) 禁欲期間と精子濃度
②受精卵の状態について
では、受精卵にはどのような影響があるでしょうか?
禁欲期間を2日間以下、3日間以上の群にそれぞれに分け、受精率、分割率、良好分割率、胚盤胞発生率、良好胚盤胞率を比較しました。図3~5参照。
結果、分割率では大きな差は見られませんでしたが、受精率、良好分割率、胚盤胞発生率、良好胚盤胞率では禁欲期間2日間以下の方が良好であるという結果がでました。
図3) 禁欲期間と受精率
図4) 禁欲期間と分割率、良好分割率
図5) 禁欲期間と胚盤胞発生率、良好胚盤胞率
① ②の結果から、禁欲期間が短い方が良いということが分かります。
その理由は、禁欲期間が長い精子の方が、精子のDNA損傷率が高いからだと考えられます。
当院では人工授精、体外受精、顕微授精の患者様には禁欲期間2日間以下をお勧めしています。