はなぶさコラムス
当院胚培養スタッフからお届けするコラムです。一般の治療ではなかなか見えにくい部分をお届けしています。
1) 補助孵化療法というのはどんなことでしょうか?
受精卵が着床そして妊娠に至るまでには、受精卵は透明帯を破って孵化する必要があります。
ですから、透明帯が破れないことで孵化できず、着床、妊娠できないようなときに、透明帯が破れやすいように補助する治療法です。
2) どんなときに補助孵化療法をする必要があるのですか?
補助孵化療法は、初期胚あるいは胚盤胞の移植前に施行します。
では、具体的にどのようなときに施行する必要があるのでしょうか?
下の表は、補助孵化療法の有用性を示す発表論文です。
こういった発表を参考にし、当院では
① 透明帯が見た目に分厚い
② 高齢である(特に40歳を越える場合)
③ 凍結融解胚である(凍結によって透明帯が硬化するため)
④ 反復不成功症例
といった場合に主に施行しています。
中でも、凍結融解胚盤胞に関しては基本的に全症例施行しております。
上記にあてはまらない場合であっても希望があれば施行は可能です。
あまりヒトの手を加えたくないという観点からも、必要がないようであれば強くはおすすめしておりません。
3) 補助孵化療法の種類について
当院では半導体レーザーを使用したレーザー法を行っております。
(詳しくは過去の培養士コラムを参照してください)
※実際に胚培養士が受精卵の透明帯にレーザーを照射している様子。
4) 透明帯にどれだけレーザーを照射するのですか?
まずは、過去に当院が行った検討データを示します。
凍結融解胚盤胞において、
レーザーにより透明帯の全周の1/4を開口してから移植した群(1/4開口群)、1/2を開口してから移植した群(1/2開口群)、1/2を開口した後にピペッティングにより透明帯から完全に脱出させて移植した群(脱出群)の3群をランダムに分類し、妊娠成績を検討しました。
1/4開口群が39.6%、1/2開口群が36.6%、脱出群が40.5%となり、
1/4開口群、1/2開口群と比較し、脱出群において、高い傾向を認めましたが、有意な差は認められませんでした。
この検討結果から開口範囲が3群の中で最も狭い1/4開口で十分に孵化し、着床している可能性が示唆されました。このような検討結果をふまえて
現在(2013年9月)の当院のレーザー照射範囲の基準ですが
初期胚 胚盤胞
透明帯全周の約1/8を菲薄(薄く)化する。 透明帯全周の約1/4を開口(開く)する。
過去の検討結果や、論文データより、上記のように設定しております。
レーザー照射に関しては、透明帯部分に照射するため、受精卵を傷つけることはありません。
胚培養部門 副主任 片田雄也