はなぶさコラムス
遺伝的要因から不妊のカウンセリングを行う遺伝カウンセラー、心の専門家である心理カウンセラーからお届けするコラムです。 遺伝カウンセリング、心理カウンセリングの予定はこちらからご覧頂けます。
読売新聞大阪版の「くらし」面に、「医療のことば」という用語解説のコラムがあります。25日の日曜日は“出生前診断”についての記事でした。紙面をご覧になった方も多いのではないかと思い、今回コラムで取り上げさせていただきます。
ひとことで申しますと、この“解説”にはいろいろ問題点があります。数えていけば10個以上にはなるので、ここでひとつひとつ訂正していくことができません。もし、この記事を読まれた妊婦さんや妊娠を考えておられる方がいらしたら、出生前診断に対する様々な意見はともかくとして、「本文中や表中の数字には間違いが多い」ということを知っておいていただきたいと思います。
表で言えば、全ての項目について少しずつ不正確な情報が入っています。例えば、少なくとも羊水検査を妊娠13週で実施している病院は、現在日本にも米国にもないはずですし、絨毛検査の流産リスクを10%と言っている病院もないかと思います。着床前診断で「染色体の検査は正確だが」というのも誤診率を無視されていますし、母体血清マーカーテストの確度(検査結果は確率なので、確度という言葉もあてはまらないのですが…)も低すぎます。本文中の%にも理解に苦しむものがあります。
一般紙の大部数を誇る新聞の記事です。多くの方は「ふむふむ」と読んでらっしゃるのではないかと危惧しております。もし、身近な問題として考えておられる方がいらしたら、どうぞ専門の医師や遺伝カウンセラーに相談していただき、“検査の限界や危険性についての正確な情報をもとに、検査を受ける身体的また精神的なメリットとデメリット”を考えて、“夫婦にとっての”最善の選択をしていただきたい、と願っています。
今回の件で、マスコミの記事を鵜呑みにする危険性について考えさせられました。専門外のことについて、私たちはマスコミから多くの情報を得ています。どんな情報も冷静に一歩引いて考えることが大切だと感じさせていただいた一件でした。
遺伝カウンセラー 松田圭子