はなぶさコラムス
当院胚培養スタッフからお届けするコラムです。一般の治療ではなかなか見えにくい部分をお届けしています。
今回は『精子の酸化ストレス』について紹介させていただきます。
呼吸によって体内に取り込まれた酸素は栄養素を燃焼(酸化)してエネルギーを作り出す役割を持っていますが、一部は活性酸素に変化します。
この活性酸素は細胞同士の情報のやり取り、感染防御や免疫機能など、正常な範囲内であれば生体機能の維持に重要な役割を果たします。一方で、過剰に体内に存在した場合には細胞に損傷を与え、ガンや生活習慣病など様々な悪影響を及ぼすことが知られています。
体内では活性酸素に対する防御機構(抗酸化機構)によって活性酸素の産生と消費のバランスが保たれていますが、何らかの原因により抗酸化機構を上回る活性酸素が産生され、体が活性酸素による悪影響を受けてしまう状態を『酸化ストレス』と呼びます。
それでは、どのようなことが原因で活性酸素が過剰に産生されるのでしょうか?
図に羅列してみました。
いわゆる体に良くないこと、不摂生と言われるようなことが多く挙げられていることがお分かりいただけるかと思います。
酸化ストレスは体全体に影響するため、精子も影響を受けます。酸化ストレスを受けた精子は頭部に存在するDNAが損傷(断片化)するといわれています。DNAが断片化した場合、受精率が低下したり、受精が起こったとしてもその後の胚発生が不良であったりと胚発育に悪い影響を与える可能性があります。
当院では、精子DNA断片化検査(SDF検査)をご希望された際に精子酸化ストレスも併せて測定しています(SDF検査+精子酸化ストレス測定: 28,000(税別))。検査をお考えの方は医師へご相談ください。
精子が高い酸化ストレスを受けていると診断された場合、酸化ストレスを抑えるサプリメントなどが処方されます。しかし、前述のとおりいわゆる不摂生、体に良くないことが酸化ストレスの主な原因となりますので、体に良いことをして体内の活性酸素のバランスを正常に保つことが大切です。
また、今回は精子の酸化ストレスと題したコラムではありますが、女性の体内であっても酸化ストレスの影響は同じように起こっています。
赤ちゃんを授かるために、まずはご夫婦おふたりが健康的に過ごされることをお勧めいたします。
培養部門 山上 一樹